プラス10㎝の〇〇で運動効率を上げる

今回もおうち時間が増える今ならではのお話です。不要不急の外出が難しいこんな毎日、「栄養不足」は色々と解消方法があるものの、「運動不足」はこれで解決!という訳にはなかなかいきません。
ならば、限られた運動の機会、まるっと効率を上げてみるのはいかがでしょうか?

コンディショニングといえば、運動のプロであるスポーツアスリートの意見・経験をもとに発想されることが多いですが、巣ごもり生活にあっては、ロコモーティブ・シンドロームの様なシニア層を対象とした研究の方が参考になります。

ロコモーティブ・シンドローム、通称「ロコモ」は、「運動器の障害のために、移動機能の低下をきたした状態 」を指す言葉で、2007年日本整形外科学会によって新しく提唱されました。ご存知の通り、高齢化社会を迎えている日本では、運動器の障害によって「歩く・座る・立ち上がる」といった日常の動作にも支援が必要な方が増えています。こうした中で、「ロコモ」を予防するためのコンディショニングに注目が集まっているんです。

「え、それ20〜30代には関係ないっしょ?」と思った方にチェックしてほしいのが、次のこちら。

1 2キログラム程度の買い物をして持ち帰るのが困難である
2 掃除機の使用、布団の上げ下ろしなど、やや重い仕事が困難
3 家の中でつまずいたり滑ったりする
4 片足立ちで靴下がはけなくなった
5 階段を上るのに、手すりが必要である
6 青信号の間に、横断歩道を渡りきれない
7 15分続けて歩けない

※日本整形外科学会「ロコチェック」

1つでも当てはまった場合は「ロコモ」の心配があるそうです…。結構厳しいじゃないですか。

先程のロコチェック、流石に今現在はゼロという人が多いかも。ですが、数ヶ月巣ごもりが続いたら…と思うと、私自身はちょっと心配だったりします(年齢だけは立派な30代後半です)。
そこで紹介したいのが、ロコモ対策の1種である画期的な運動方法。

その名も!「大股歩き」!

はい、大股で歩くだけです。プラス10cmで構わないそうです。いたって真面目なお話です。
これもきちんとした研究に基づいているので、まずはこちらをみてください。

※スポーツ科学研究, 6, 50-54, 2009年,貯筋のすすめ,福永哲夫,早稲田大学スポーツ科学学術院 

これは、加齢による歩幅の変化を示したグラフで、年々歩幅が狭くなっていることが分かります。これは加齢に伴ってお腹〜下半身の筋力が低下することにより,膝が前に出なくなるためだそうで、結果歩くスピードも低下してしまい、運動の効果も下がっていく、という悪循環が発生します。つまり、歩幅10㎝の差はあなどれないのです。
「大股歩き」は、歩幅を意識して10㎝広げることで、日常生活の基本運動である「歩き」の効率と活動量を上げてしまおうという戦略ですね。まさに一步一步の努力です。

じつは大股歩きは、企業の健康経営にも活かされています。体重計・計測器メーカー大手のタニタは、オフィスに運動やリフレッシュを促すマーキングを施し、働きながら健康づくりに取り組める環境を整備しているそうですが、この中に理想的な歩幅を確認できる「歩幅スタンプ」も含まれているとか。みえない運動機会を上手に利用しているのは、流石タニタさん…!というところでしょうか。

私たちが今できる運動は確かに多くはないのかも知れません。だからこそ1つ1つを、少しでも効果的にすることが、巣ごもりにフィットしたコンディショニングといえるんじゃないでしょうか。