「朝ごはん」は、なぜ大事なのか?

ステイホームな毎日。スマートフォンの歩数計を見てギョッとされた方も少なくはないでしょうか?私の場合、意識して歩くと平均10,000歩、通勤する日は67,000歩なのですが、今年に入ってからは3,000歩を下回ることもチラホラあります。だから「いっそ朝食抜いてしまおうか」というお気持ち、とても共感します。

運動の機会が減った現在。朝食を抜いて摂取カロリーを抑えるという方法にメリットを感じるのも理解ができます。ですが一旦冷静になり、朝食を抜いた場合のデメリットについて栄養学を元に考えてみましょう。

栄養学は、病気を予防して健康を維持するため、食事や生活習慣の正しい知識と実践方法を示唆します。「何を食べるべきか」つまり、摂取したほうが良い栄養素とその量を教えてくれる学問といえます。
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日に摂取すべき栄養素&栄養量の観点からみれば、朝食を抜こうが夕食を飛ばそうが、11食でも15食でも、必要な栄養素が取れている限りは食事に問題ないはずです。サプリメントという食品は、まさにこうした「摂りたい時に、栄養素を〇〇mg補う」という考えにもとづいて設計されていますよね。

このオーソドックスな栄養学から見ると、朝食を抜いてしまうデメリットは「1日に摂るべき栄養を補う機会を1回失う」ということになりそうです。とはいっても!数十種類におよぶ栄養を、12食という少ない回数で全て補うというのは、至難のワザです。一度に食べれられる量には限界もありますし、どうしてもバランスが取りにくいんです。摂るべき栄養価を2食に収めるべく綿密に計算するくらいなら、朝食を含め13食を心がけたほうが、結果楽チンです。

 


じゃあ栄養学的には、サプリメントなりで栄養を摂っていれば朝ごはんは不要!かと言えば、勿論そんなコトは有りません。これにも、きちんとした理由があります。
実は……これまであえてお話してこなかったのですが栄養学も日夜進歩をつづけています。そして近年注目を集めているのが「(何を)いつ食べるべきか」を明らかにする、その名も「時間栄養学」です。

改めて考えると不思議なことですが、人間以外の生物は時計を見ることせずに、124時間という周期で活動を行っています。これは「体内時計/生物時計」という、体内の時間軸を調整するシステムが機能しており、1日単位で時間のリズムを調整しているためだと言われています。

こうした体内時計の研究は、はじめ脳の時計に注目して進められため、体内リズム調整には「光の刺激」が重要であるとされました。朝になったらカーテンを開け光を浴びると、目覚めがよくなると言われるのは、こうした研究報告が元になっています。
ですが、体内時計の研究がすすむにつれ意外な発見がありました。実は、脳以外のすべての細胞も、同じく時計を持っており、しかも光の刺激ではなく「食事」が体内時計のリズム調整に利用されている、ということが分かってきたんです。

つまり……人間は身体の中に細胞の数だけ時計をもっており、それらをまとめている脳も独自の時計を持っています。朝起きて光を浴び、朝食を摂ることで、脳と細胞それぞれの時計はリズム調整され、ズレなく進む事ができます。
しかし、朝食を抜きつづけると細胞の時計だけリズム調整が効かず、徐々に2つの時計はズレが大きくなります。こうしたズレが不調の原因となってくる、というのが「いつ食べるのか」を元とした時間栄養学から見た、朝食を抜くデメリットという訳です。

 

時間栄養学は、こうした人間の「体内時計」「食事」の関係を前提とし、食品/栄養の種類や、食べる時間・順番・速さなどを提唱する新しい栄養学のジャンルで、これから多くの発見が期待される学術カテゴリーです。同じ食品/栄養素であっても、体内時計のリズムに応じ、吸収効率や消費されやすさに違いが出てくることも示唆します。つまり、栄養をより効果的に摂取したり、逆に避けるべき食べ方について知る糸口になります。

さらに、この時間栄養学が注目しているWhen(いつ)」を超え、「誰が(Who)」「何を(What)」「どこで(Where)」「どのように(How)」食べるのかという、食の5W1Hが複合的に理解されるベきだと考える識者も増えているようです。どこで食べるかや、誰と食べるかによって、吸収効率が違うなんて研究もそのうち登場するかも知れませんね。